教えて!寺澤先生COLUMN コラム

ウイルス同時感染に注意

インフルエンザが大流行を始めています。冬は複数のウイルスへの同時感染リスクが高まります。不要な抗生物質の投与を避けるためにも、正しい診断が重要です。

インフルエンザが大流行

 インフルエンザが10年ぶりに大流行しています。主流はA香港型です。
 マスコミは「サブクレード K」を盛んに取り上げています。サブクレードKは新たな変異株で、A 香港型の派生型です。
 国内で流行している A 香港型ウイルスのうち、9月以降、11月5日までに採取された検体の約96%がサブクレード K だったと、国立健康危機管理研究機構・国立感染症研究所が発表しました。
 サブクレード K は感染拡大のスピードが速い一方で、症状や重症度は従来のウイルスと大きく変わらないとみられています。
 このようにインフルエンザの流行ばかりが注目されていますが、実は、冬場は様々なウイルスの感染が増えます。
 医師が診断を間違うと、治る病気も治らず、症状が長引いたり重症化したりすることがあるので、注意が必要です。

マイコプラズマが陽性だった

 最近、こんなことがありました。5歳の Aさんは熱性けいれんを起こして、救急車で病院に運ばれ、そのまま入院しました。入院時の検査では、インフルエンザ、新型コロナ、マイコプラズマ感染症のいずれも陰性だったということです。
 白血球などの数は正常範囲で、脱水もありません。正確な診断がつかないまま生理食塩水などの点滴を継続していましたが、熱は下がらず、体調は改善しませんでした。
 その間、2歳上の兄が偶然、当院を受診しました。症状は熱と咳でした。
 検査で、インフルエンザ A 香港型とマイコプラズマを検出し、抗生物質と抗インフルエンザ薬を投与したら、翌日に解熱しました。
 家族は兄の結果に驚き、入院中の A さんにもマイコプラズマの検査をもう一度するよう病院側に求めました。
 病院側が しぶしぶ行った検査の結果は、陽性でした。
 さらに驚いたのは、Aさんと同部屋の入院患者さん全員がマイコプラズマ陽性だったことです。
 マイコプラズマの潜伏期間は2~3週ですから、入院してから院内感染を起こしたわけではありません。全員が最初からマイコプラズマに感染していたのです。
 この病院は入院時の検査でマイコプラズマを全く疑わなかった可能性があります。Aさんはマイコプラズマに有効な抗生物質を服用し、間もなく改善して退院しました。

増えている同時感染

 近年は、複数のウイルスに同時感染する人が増えています。
 当院では11月第3週の月曜日に、インフレンザ A香港型陽性患者の3割から、マイコプラズマ、RS ウイルス、アデノウイルス、ライノウイルスが同時に検出されました。
 他の医療機関でインフルエンザと診断され、インフルエンザの薬を服用して、熱が一旦下がっていた患者さんが、4日目から再度発熱して受診し、マイコプラズマが陽性だった例が複数ありました。
 インフルエンザは潜伏期間1~3日、マイコプラズマは潜伏期2~3週間ですから、たまたま発病の時期が重なると、このような事態になります。
 高熱で受診し、てっきりインフルエンザと思っていたら、マイコプラズマ感染だったというようなことも稀ではありません。
 新型コロナウイルスの流行中に幼少期を過ごした人たちの中には、十分な免疫がない人も一定数います。
 乳幼児期に感染の機会がなくて RS ウイルスやヒトメタニューモウイルスなどに免疫がないと、10代、20代で感染する例があります。
 同時感染は今後、ますます増えていくかもしれません。

正しい検査で耐性菌を減らす

 誰もが同時感染するリスクが高い現代には、受診の際に、感染の有無を確認する正しい検査を受けることが、とても重要です。
 それによって、不要な抗生物質の投与を避けることができるからです。
 抗生物質の過剰投与による耐性菌の蔓延が大きな問題になっています。
 たとえば、マイコプラズマ感染症は咳や発熱、喉の痛みなどが主な症状で、インフルエンザに似ていますが、治療にはマクロライド系の抗生物質が使われます。
 ところが最近は、マクロライド系抗生物質の効きがよくありません。マクロライド耐性のマイコプラズマが急拡大している疑いが強いのです。
 マクロライド系が効かない場合は、年齢にもよりますが、ミノサイクリンやクリンダマイシンに薬を変更すると、翌日には解熱し、咳も改善します。

ライノウイルスに抗生物質は不要

 熱や鼻水、咳の原因になる感染症のウイルスで最も多いのは、ライノウイルスです。
 ライノウイルスは鼻かぜウイルスともよばれ、100種類以上あり、症状も多彩。症状によっては、インフルエンザと区別がつかない場合もあります。
 ライノウイルスに有効なワクチンや特効薬はなく、治療は対症療法が中心で、休養や十分な水分補給をしていると改善します。
 きちんと検査をしてライノウイルスだとわかれば抗生物質の投与は必要ありません。誤った診断で抗生物質を投与されると、他の感染症にかかったときに、薬が効かない恐れがあります。